今回はオーディオビジュアル機器品評会のVGP2022で「イヤホン大賞」も受賞している完全ワイヤレスイヤホンの最高峰Technics「EAH-AZ60」を購入したのでレビューしていきたい。
購入背景
今年発表されたAirPods Pro(第二世代)。第一世代のAirPods Proは発売当初から愛用しており、3年ぶりの新モデルとなれば飛びつくところであるが思い留まったのには理由がある。“39,800円“という価格だ。
しかもオーディオ関係の出版社のレビュー記事では、音質の面では向上は感じられない、という話だ。それならば4万円も出してAirPods Pro を買うなど馬鹿馬鹿しい。
そもそも以前のSOUNDPEATSのイヤホンレビュー記事で言及済みの通り、AirPods Proはノイキャン性能とAPPLE製品とのシームレスな接続が強みで、高価格帯のイヤホンとしては音質があまり良くない。
ならばリセールバリューだけはやたら高いAirPods Proをさっさと売り払い、音質に定評のあるワイヤレスイヤホンに乗り換えるのが吉、と考えたわけだ。
購入はヨドバシで
音の良さというのは好みも分かれるので実際に聞いてみないと分からない。そこで秋葉原のeイヤホン、または近くの家電量販店に行ってみようと思ったが、都内まで出るのが面倒なので近くのヨドバシカメラへ行くことにした。
ヨドバシカメラでは試し聴き用として店頭に出している機種が限られるが、イヤホン売り場の店員さんに話しかけると最新機種を含めて自由にトライさせてくれる。ただし、自由気ままに試し聴きができるeイヤホンと異なり、店員さんがいる前でじっくり聴き比べるのは心理的ハードルが高い。
しかし3万円くらいのハイエンド機種を買うのだから遠慮して失敗しては元も子もない。元々有力視していたTechnicsに加え、BOSE、SONY、ANKER、AudioTechnica、SENNHEIZER等の数種類を試させてもらい、最終的にSONYとの比較評価を制したのはTechnicsとなった。決め手は圧倒的な音響感とキビキビとした楽しい迫力のある音であった点、そして耳への装着感が良かった為だ。
価格2.8万円に対しヨドバシポイントを全投入し、2.5万円で購入に至った。
結果的に満足のいく機種選びをサポートしてくれたヨドバシ店員さんには感謝。
Technicsは完成度が高すぎ
VGP2022でイヤホン大賞を受賞した理由は以下の通り。
「音楽再生、通話、ノイズキャンセリングまで、すべてに高い完成度を誇る完全ワイヤレスイヤホンに対して。」
http://vgp.phileweb.com/vgp2022/award.html#award14
詰まるところ、この文言に書かれていることが全てであるが、開封レビューも踏まえて説明したい。
AZ60には7種類のイヤーピースが付属している。フィット感を細かく調整でき、AirPods Proと同様シリコンタイプのイヤーピースなのでスムーズに耳に装着できる。最後まで迷ったSONY WF-1000XM4はイヤーピースがウレタンなのでイヤーピースを押しつぶしてから耳にはめる必要があった。ウレタンのイヤーピースは正直そこが面倒だ。
イヤーピースは内部にスポンジメッシュが備わっているのでイヤホン本体にホコリやゴミが入りにくい仕組み。
AirPods Proでも耳が痛くなる私の耳形状でもAZ60は全く痛くならないのは驚きだった。
ケースはAirPods Proよりも横長で底面がフラットなので自立する。素材はアルミ製に見えるがメタリック調の樹脂。USB-C端子、15分充電で70分の使用可能な急速充電にも対応している。
スペック比較
AirPods Pro(第二世代)とAZ60のスペックを比較してみた。
結果的にオーディオテクノロジーはほぼ近いレベルのスペックであるがAZ60はハイレゾ・LDACに対応している点で音質的に上回ると考えられる。
Technics EAH-AZ60 | APPLE AirPods Pro(第二世代) | |
価格 | 27,720円 | 39,800円 |
サイズ | 72x34x27mm | 60.6×45.2×21.7mm |
重量 | 総重量45g、片耳7g | 総重量50.8g、片耳5.3g |
チップ | 不明 | H2ヘッドフォンチップ |
形状 | カナル型 | カナル型 |
耐水性能 | IPX4 | IPX4 |
バッテリー | 7.0時間(連続再生) 24時間(ケース込み) | 6.0時間(連続再生) 30時間(ケース込み) |
通信方式 | Bluetooth 5.2 | Bluetooth 5.3 |
ANC | あり | あり |
マイク | 4つ(合計8つ) | 2つ(合計4つ) |
オーディオ テクノロジー | バイオセルロース振動板 8mm径ダイナミックドライバー LDACコーデック対応 ハイレゾ認証 ノイズ低減クリアボイス マルチポイント イコライザーカスタマイズ | 専用の高偏位Appleドライバ 専用のハイダイナミックレンジアンプ 適応型外部音取り込み ダイナミックヘッドトラッキング 動き・音声の加速度センサー デュアルビームフォーミングマイク マルチポイント |
イヤーピース | 7種類 | 4種類 |
コントロール | ※後述 音声アシスタント対応(Alexa、Siri) | 1〜3回のタップ操作 長押しによるANC切り替え Siriによる音声操作 |
充電端子 | USB-C | LightningおよびQi充電 |
コントロールはイヤホン本体の円状の部分をタップ・長押しして操作する。左右別々の操作が可能な為、非常に広範なコントロール機能が備わっている。逆にこの操作を全て覚えるのは至難の業かもしれない。
専用アプリ「Audio Connect」
Technics専用アプリを使うことでスマートフォンからイヤホンの詳細設定を行うことが可能。
ノイズキャンセリングの最適化
ノイキャンや外音取り込みの効き具合を微調整することができる。外部環境に応じてノイズキャンセリングを最適化させるスマート機能もあり、自由度が高い。
イコライザー機能
AZ60はデフォルトのままで十分に迫力のある音が楽しめるが4種類のプリセットに加え、自由に音域を調整できるカスタムイコライザーがあるので好みの音質に調整も可能。
ヘッドホンを探す機能
うっかりイヤホンを落としてしまっても「ヘッドホンを探す」機能をONにしておけば安心。イヤホンの音を鳴らしたりスマートフォンと連動して位置情報を記憶してくれるので、いざという時のために設定しておくと便利。
優れた点①〜迫力と立体的な音場感〜
AZ60で音楽を聴いた時の感想は「ワイヤレスイヤホンでここまで表現出来るのか!」という感動だった。低音、中音、高音域がどれも潰れることなく高い解像度で耳に入ってきて、ボーカルの音と演奏音もバランスが良い。私はメタルを聴くので低音を強めに設定しているが篭るような感じも無く迫力のある低音が楽しめる。愛用中のWH-1000XM4(ヘッドホン)に負けじと劣らぬ音質。
もちろん音源にも左右されるが私の使用環境はLDAC未対応の為、LDAC対応スマホをお使いならさらに高音質で楽しめるはずだ。
バイオセルロース振動板を採用したダイナミックドライバーと新開発もハーモナイザーのお陰だろうか、とにかく透明感のある自然な高音が心地よい。
優れた点②〜マルチポイントに対応〜
本機は10台のマルチペアリング、2台のマルチポイントに対応している。
スマホで音楽を聴きながら、パソコンに掛かってきたMicrosoft Teamsで会話に出る、というシーンでもシームレスに機器間の接続を繋いでくれる。
タブレットでYoutubeを見ながらスマホの着信に出ると言った場面等でも活躍し、複数の端末を使いこなす現代人の強い味方だ。
優れた点③〜ノイキャン性能〜
本機のノイキャン性能はかなりのものだ。ノイキャン性能ではAirPods Proが業界で一歩リードしていると思っていたがほぼ同等レベルだ。
さらに優れた点は2つのアンビエントモード(外音取り込み)が用意されている点。
トランスペアレントモードは従来の周囲の音を拾い上げる方式で、付けていない時と同じように音を取り込んでくれる。
アテンションモードは音楽を一時停止し、周囲の会話やアナウンスに特化して音を取り込んでくれる機能。電車内やホームのアナウンスを聞きたい時に最適なモードだ。
優れた点④〜ヘッドフォンと遜色ない指向性〜
これまでのイヤホンレビューにおいてもPUBGモバイルのようなFPS,TPSゲームで使えるかを試しているが本機に関してはヘッドホンと遜色ないレベルで敵の足音や銃撃の方向を把握することができた。
イヤホンでここまで音の指向性が把握できる機種はそう多くないので評価点が高い。
ゆえにヘッドホンが蒸れる時期には本機がメインとして活躍するだろう。
優れた点⑤〜テレワークで活躍するマイク機能〜
本機は2つの高性能MEMSマイクと発話検知マイク、ノイズキャンセリング用マイク(フィードバックマイク」左右で合計8つのマイクを搭載。
独自のアルゴリズムによる音声解析を1秒間に15,000回以上(!)行うそうだ。
風切り音対策としてマイク部には金属メッシュが配置されており、発話者の声だけを高精度に検出することが可能。テレワーク層をターゲットに本気の仕様を搭載してきた印象。
実際に使用したところマイクの性能のみならずWEB会議で参加者の声も聞き取りやすい。PCのスピーカーやAirPods Proでさえ声が聞き取りにくいシーンは多くあったが、AZ60なら精細な声になり会話をスムーズに進めることができると考えられる。
U3万円の価格帯のベストバイ!
AZ60を心底気に入ってしまった私はON/OFFを常に本機と共に過ごすようになった。
おまけにベジタブルタンニンのイタリアンレザーでレザーケースまで自作してしまった。
音質でイヤホンを嫌煙しているヘッドホンユーザーもAZ60なら満足できる、そのように感じた優秀な完全ワイヤレスイヤホンだ。