これまで約4年間愛用したパネライ ラジオミール。その時計と別れを告げることにしました。
今回は「パネライを売った理由」「どのように売ったか」をお話していきたいと思います。
なぜパネライを売ったのか?
愛用していたパネライのラジオミールPAM00754は初めて購入した高級機械式時計です。厳密に言えば中古のOMEGAシーマスターアクアテラが一番最初ですが、当時は中に入っているムーブメントの知識も一切なくヤフオクで10万円くらいで買い、2~3年後にブレスレットのバックルが壊れたのでヤフオクで売りました。
ラジオミールは2019年12月頃、まだコロナによるインフレが起こる前にGMTという並行店で新品42万円で購入しました。今の時計ブランドの値上げを考えると非常にいい時に買ったと言えます。
一方、そろそろオーバーホールの時期を迎えようとしており、その中で本モデルとの付き合い方を考えるようになりました。特徴的なワイヤーループラグはこの時計の魅力の1つであり、それと同時にストラップ選びを難しくする要素の1つでもあります。なぜなら、ワイヤループラグの幅は27ミリもあり、元々飽きっぽくウォッチストラップを変えながら楽しむ私のようなタイプにとっては、ストラップ選びが制限されることが若干フラストレーションに感じることもあった為です。
また、高級時計を買う前は気づいていなかった要素、すなわち、時計のサイズ感、着け心地やバックルの微調整機構の有無、そしてムーブメント等を知れば知るほど、より優れた機械や違ったモデルが欲しくなってくるのです。
資産価値という点においては庶民が買える範囲ではロレックス一強であり、それに比べるとパネライの市場価値は少し見劣りして見えてしまうこともあります。
もちろん、大ぶりなクッションケースやリューズデザインに代表されるパネライの独創的なデザインに対する愛情が色褪せたわけではありません。加えて手首周り17㎝の私にとって45mm径、13mm厚のパネライは思ったより収まりが良いです。しかし、大きなダイヤルによる優れた視認性とは裏腹に、やはり目立つので使うシーンを選ぶのも事実です。同じパネライでも42ミリ径のモデルやサンレイ仕上げの美しい文字盤だったり、タフなサブマーシブル等に目移りをしてしまったというのもあります。
そのようなわけで、より高みを目指すためのステップアップとして、今回パネライを売ることを決意したのです。
なぜ中野?
事前知識なしにいきなりブランド買取店に持ち込むのは少々危険です。
特にあまり交渉が得意でない方は買取店に言いくるめられて安値で売ってしまうリスクもありますし、事前知識なしでは有利に交渉を進めづらいと考えられます。
一般的に買取相場は中古販売相場額の7割前後とか言われていますが、「店舗によって査定額に大きな差が出る」との情報をネットで得ていた為、”事前に一括査定サービスを使用して相場観を掴む”ことにしました。その上でいくつかの実店舗で査定をしてもらい、最も高値で買い取ってくれる店舗で売りたいとの考えです。
ここで、ある買取専門業者とのやりとりの実例を紹介します。
銀座P「査定依頼を拝見して電話しました!とても素敵なモデルで是非頑張らせて頂きたいと思います。当店はセリ・オークションの仲介を行っており一番高値で買ってくれる買い手を探すことができます!宜しければ是非一度店舗にお越しいただき査定させて頂けないでしょうか?」
ポテイト「土曜日の〇時なら行けます。」
銀座P「ありがとうございます!実際にこのモデルをお探しの個人の方もいるので、すぐに売れると思います。その方との交渉も早速取り掛かりたいのですが宜しいでしょうか。より高い値段で売れるように全力でサポートします!そこでお客様にも一つお願いがあるのですが、幾分狭い業界なので他店に持ち込みされると情報が流通し、買取額が下がってしまうことが考えられますので他店への査定持ち込みはしないようにご協力お願い致します。」
ポテイト「ん?他店の査定はなぜダメなんですか?(買取額が下がることの理屈が付かないよな)」
銀座P「買取額を出来る限り高く維持する為です!」
ポテイト「あとセリ・オークション仲介とおっしゃいましたが、買取ではなく委託販売ということですか?」
銀座P「買取もやっております!お客様が最も良い条件で売れる方法を提案致します!」
ポテイト「…(このにーちゃんの声、会社に掛かってくる不動産投資の声色と同じなんだよな)」
※ポテイト記憶と手元メモより
電話を切った後、早速googleマップの評価を確認しましたがサ◯ラ?と思しき口コミが多数。その根拠として、口コミ総投稿数が1−2件しかない捨て垢による投稿が多数見受けられた為です。
他店との交渉を潰そうとしてくるあたり、最近話題のビッグ○ーターが脳裏に浮かびます。そのような信頼性に欠ける店には、大切な時計を触らせることすらはばかられます。
やはりブランド品買取業界も御多聞に漏れず情弱はカモられる対象に違いありません。複数店舗を天秤にかけ本当の市場価値を見極めることが個人の売り手としてできる最善策でしょう。
時計一括査定ではメールで概算見積額を3件入手しました。提示額としては①~38万円、②~43万円、③~45万円でした。しかしChrono24や楽天におけるラジオミールPAM00754の中古相場は45万円前後であり、買い取ってからOHや研磨をして販売マージンを乗せることを考えれば最高額の45万円で買い取ってもらえる可能性はほぼゼロです。ここで得た事前情報により、”30万円台後半で売れたら御の字”かなという感覚を掴むことが出来ました。
また中野には「時計店」が多く存在し競争原理が働きやすい為、”適正価格”での買取が期待できそうなことが選定理由です。
中野に行く!
中野ブロードウェイにはジャックロード、ウォッチニアン、れんず、クォーク等有名な時計店がいくつかあり、それらの店舗で買取査定を行ってくれます。買取だけでなく販売機能も有したお店の方が信頼できる気がします。
また中野ブロードウェイには1度も行ったことがなかったので、時計の聖地巡礼として訪れたかったことも理由の1つです。
では早速、買取査定をした店舗と査定額について時系列で紹介していきます。
各時計買取店との交渉(時系列)
なんぼや 査定額¥324,000+α
「なんぼや」はネットで高級時計探しに徘徊していると良く遭遇するブランド品販売店の一つ。中野ブロードウェイ1階にあるのでフラッと立ち寄ってみました。
受付をタブレットで済ませ椅子で待ちます。店舗内で待たなくても順番になるとスマホに通知してくれるサービスもあるようです。
しばらく待っているとご婦人が持ち込んだブランド品の査定が終わったようで、商談室に通してもらいました。鑑定士はスーツをビシッと綺麗に着こなした30歳前後の若いニキです。
完全個室に通された後ペットボトルのお茶を頂きました。対応は丁寧で査定も早かったので好印象です。査定額は¥324,000でしたが「他店のほうが査定額が高ければOH代2~3万円分のプラスができるか検討するのでまた来て下さい」とのことでした。まだ1店舗目なのでお礼を言ってお店を後にしました。
ウォッチニアン 査定額約¥360,000〜380,000示唆
ウォッチニアンは有力時計並行店の一角と言ってよいでしょう。某Youtuberの動画では銀座界隈でロレックスを安く買える並行店としてウォッチニアンと銀座Rasinが紹介されていました。
こちらも中野ブロードウェイ1階にあります。3階にも買取専門店舗があるのですが、どちらに行っても運営は同じで「3階は有名時計店が密集し集客力があるので出店している」とのことでした。
査定は入り口入って目の前のオープンカウンターで商談、対応してくれたのは30歳前後のポロシャツを着たニキで、特に無駄なトークはありません。査定時間は長めで、パソコンで本部とやりとりしているっぽい感じでした。
これから何店舗か査定周りすることを伝えたところ、「ウチの買取額は36~38万円の間になりそう」と示唆されました。他店舗の状況をかなり意識しているようでしたが、看板の「日本で一番高い買取屋」とのフレーズ通り、しょっぱなから目標額に近い査定額を示唆されたのは嬉しい誤算でした。
れんず 査定額¥350,000
こちらもネット徘徊していると良く遭遇する有名時計店です。販売店舗内ではスーツをバシッと着こなした男性が4~5名いました。店舗奥の商談テーブルで査定してもらい、「OH歴はあるか?、店舗奥の計器で精度がどのくらい出ているか確認してよいか」等の会話をこなし、査定額35万円を提示してもらいました。
ウォッチニアンに比べると査定時間が早く、潔い価格提示、比較的高い査定額であったことは非常に好印象でした。
ベルモンド 査定額¥330,000
ベルモンドはGoogleマップの口コミで「ビル内で一番高価買取してくれた」との情報があったので立ち寄ってみました。
写真の販売店舗の通路向いに商談ルームがあり、バーカウンターのような横一列に4席ある仕切りなしのテーブルで査定してもらいます。
どの店舗でもそうですが、ルーペで現物の傷や真贋の見極めをしながらパソコンで中古相場をチェックしているようでした。
査定額は33万円と他店に比べて少々期待外れですが、「ぜひ買い取りたいモデルなのでご検討ください」とのことなので交渉すればプラスアルファの余地はあるかもしれません。
ジャックロード 査定額¥304,000
そろそろ疲れてきたので次で最後にしようと思い向かったのは、中野ブロードウェイ随一の売場面積を誇るジャックロードです。
受付後3~4分してすぐに声が掛かり、通路向かいの商談カウンターに通されました。
余談ですが、ここで出されたブドウの香りがするお茶が非常に美味しかったです。コースターもワイルドスワンズのスティングレイ革を使用したもので、非日常感が感じられます。
このカウンターは横一列に4名座れるオープンカウンターになっており、私が査定してもらっている横で、入れ替わり立ち替わりに、チューダーを購入したリーマン風ニキ、カルティエらしき時計を購入しリューズ操作の説明を受けるご婦人、金無垢・アフターダイヤの話で盛り上がる成金ニキ、そして隣の時計売却にきた50歳前後のおっちゃんは交渉成立したようで百万円の札束3-4束をカウントしていてビビりました。さすがジャックロード、人気店です。
査定自体は店舗裏で査定担当者の方が査定するとのことで、15-20分くらいは待たされました。他店よりも慎重に査定している印象なので時計を買う場合は安心感があります。
しかし査定額は約30万円と一番渋い結果でした。買取はあまり強くないとの噂は本当のようです。
他店では「綺麗に使ってますね、あまり使ってなかったんですか?」とよく言われましたが、ジャックロードでは「OHに加え、傷取り、革ベルト交換まで必要なのでこの提示額」とのことでした。
再度ウォッチニアンへ
これまでの査定で最高額は35万円だったことを伝え、「もう少しいけますか?(笑)」とお願いしたところ、快く引き受けてもらい正式査定で36.5万円を提示頂きました。
更に「新規客なので今後のお付き合いも是非」との計らいにより最終的な買取額は37万円にアップ頂きました。最も高値での買取に感謝です!
査定中・手続き中に手持ち無沙汰だったのでいくつか質問してみました。
- 「最初の査定時に自店舗では売らないと言ってましたが、なんで自店舗で売らないんですか」⇒「買取店と販売店はグループ会社の関係で運営が別、自社オークションもあるし海外販売等の複数ルートがあるんです」
- 「自社で仕入れて自店舗で売るのが一番良さそうですが、今なら円安だから海外で売った方が利ザヤが稼げるってことですかね」⇒「そうなんです」
この会話で「なるほどな」と思いました。パネライの場合、いわゆるデカ厚なので腕が細い日本人には結構ハードルが高いのです。また、昨今の腕時計のトレンドとして「小径化」が挙げられます。
パネライも「ルミノールドゥエ」「クアランタ」のような40mm径モデルを拡充していますが、デカ厚モデルに関しては海外の人気のある市場の方が売りやすいでしょう。
最近中古パネライの国内流通在庫が少ないと感じていましたが、そう言った背景もあるかもしれません。
有名販売店=高価買取ではない!?
お昼ご飯を食べる時間を惜しんで時計店巡りをした為、最後は近場の銀たこで一人乾杯です。
今回の時計売却を通じての学びを以下に纏めたいと思います。
- ネットでの簡易査定やGoogleマップ口コミ等の事前情報を得て万全を期すべし。(サクラ情報や実体験に基づかない薄っぺらい情報には注意)
- 時計査定時の対応によりお店のスタンスが分かり時計購入時の参考になる。
- 有名販売店だからといって必ずしも買取に強いわけではない。
- 最後は買取店と売り手の信頼関係。