
過去購入モデルを回顧
セイコーダイバーといえば、本格的なツールウォッチとして刻んできた歴史や、無骨で実用的なデザインから多くの時計愛好家たちに愛されてきた「男のロマンウォッチ」と言えると思います。また、「日本人なら1本はセイコーを持つべきであろう」といった愛国精神溢れる人たちにとっても、防水性が高く堅牢で長く使えるセイコーダイバーは有力候補になります。かくいう私もセイコーダイバーズウォッチのファンです。
「トランスオーシャンSBDC039」

当時中古で購入したOMEGAアクアテラが職場の先輩と丸被りしてしまい、そちらを売却して購入したのがこのトランスオーシャン。セラミックベゼルにサファイヤクリスタル、ムーブメントは6R15、そして無駄のない洗練されたデザインと、今回購入したSBDC203と似たような位置付けのモデル。しかし径45mmかつ200g超級のヘビー級であった為、付け心地が悪く後に手放すことに。デザインはセイコーサムライのようでもあり、個人的には完璧だった。
「古いセイコーダイバー」

ヤフオクで安価購入した古いダイバーズ。デザインは個人的なツボを突いていたが、精度はあまり良くなく、裏蓋がかなり頑丈にねじ込まれていたので開けられず。もしかしたら中身は別のムーブメント等にすり替えられていたのかもしれない。OHするのも躊躇したのでそのまま売却。しかし、使い込まれたセイコーダイバーのかっこよさを教えてくれた良い経験であった。
「セイコーモンスターSZSC005」

2019年に流通限定モデルとして販売されていたモデル。当時5−6万円程度であったが、重厚感のある金属ベゼルや爽やかなグリーンダイヤルはいま見ても魅力的に映る。ムーブメントは4R系でパワーリザーブも50時間位あった。この当時のブレスレットは重いけど質感はそこそこ高い、という記憶がある。
【SBDC203】とりあえず箱から開封!
17.6万円で購入したSBDC203ですがパッケージは大変簡素です。もっとも、時計にコストを全振りしている、ハイクオリティなダイバーウォッチをこのプライスレンジで出している、と考えれば許容範囲とも言えます。
しかし、キングセイコーに付属するようなポーチ?ウォッチロール?のようなものがあれば、もう少し所有欲が満たされたはずです。

エコ包装とでも言いましょうか。購入した時計や高級家電の箱は必ず保管しておくタイプの筆者でも、一瞬「捨てても良いかな」と思える簡素さです。10万円台前半でもしっかりした箱付きだったトランスオーシャンシリーズの面影は何処へ。

SBDC203は都会のライフスタイルウォッチ
そんなSBDC203ですが、時計本体のデザインやクオリティは唸る出来です。項目別に説明していきます。
ケースとベゼル
購入の決め手となったのはセイコーダイバーらしからぬ(?)洗練されたルックスです。径41.3mm、厚み12.5mmサイズのケースに6R55ムーブメントが積まれています。セラミックス製八角形ベゼル、海岸線をイメージしたダイヤル装飾、バレット形状のインデックス、これら全てが高次元で融合し、無駄の全くない(賛否のあるXロゴはさておき)新しいセイコーダイバーの境地を切り拓いてくれました。

仕上げはポリッシュとサテンを組み合わせ、これまでのツールウォッチ然としたセイコーダイバーの印象からガラッと変わり、更にはリューズガードからラグまで滑らかな曲線を描くようにデザインされた為、エレガントさが増しました。この辺りの曲線美はグランドセイコーを彷彿させます。
風防はもちろんサファイヤクリスタル製で縁は45°に面取りされています。



ケースバックは捻じ込み式で300m空気潜水対応の防水性を備え、仕事後にそのまま道頓堀にダイブしても心配ありません。(時計に限って言えば)

ムーブメント6R55の実力
コンパクトながら72時間のパワーリザーブを備える6R55は、キングセイコーやプレザージュにも採用されるセイコーのミドルエンドムーブメントです。日差 +25秒~-15秒、振動数21,600振動/時間(6振動/秒)のスペックで実用レベルという印象です。
まだ手元機の精度は未計測なので追って追記したいと思います。

※写真はキングセイコーWEBサイトより引用
ブレスレットとバックル
ケース同様にポリッシュとサテンが組み合わされています。ラグ幅20mmからブレスエンドピース18mmまで緩やかにテーパードしたデザイン。

ブレスのコマが小さいのでサイズ調整がしやすく、面取りも丁寧にされているので腕馴染みがとても良いです。着けていて腕に不快に食い込むような感覚はありません。適度な重みもあり、高級感を感じさせます。


ただし、バックル&ダイバーエクステンション、これはいただけません。金属が薄っぺらいためか、「カシャカシャ」とチープな音が鳴り、バックルの留め具も「カチッ」と軽快にハマる感触がありません。部品の精度が低いのか、組み付け精度が低いのかあるいはその両方なのか…。少しコストダウンが感じられて残念な点です。



最悪バックルは許せるとして、ダイバーエクステンションは要らなかったです。海外Youtuberにもデメリットとして取り上げられることが多い不評な部分です。作りが安っぽく外そうとしたところ、三つ折れ式バックルに完全に固定されているため外すことが出来ません。一体なぜ?ライフスタイルウォッチならダイバーエクステンションを使う人の方が少ないと思われる中、わざわざ外せないような作りにするのは理解に苦しみます。あくまでダイバーズウォッチなのだ、というプライドなのかもしれませんが、せめてバネ棒固定式にして外せるようにしてもらいたいですね。
重量
SBDC203の重量はブレス込みで約168g、ロレックスシードゥエラー4000の163g、フルメタルGーshockの155gと比べてもかなり良い勝負です。何より、過去の保有モデルが180〜200g超えであったことを考えれば、かなり軽量化が進んだ印象です。腕ノリの良さにも貢献していると思います。



PPのノーチラスっぽいけど、セイコーの個性が光る

時計好きの人なら気がつくと思いますが、このモデル何か既視感がありますよね。そう、パテックフィリップのノーチラスです。

※パテックフィリップのノーチラス(公式WEBサイトより)
柔らかな八角形デザインに、ダイヤルパターンが似ていると言えないこともないです。しかし、光の当たる角度により黒〜紺へと表情を変えるセラミックベゼルとダイヤルのカラーパレット(色使い)、バレット形状のインデックス等独自色が多くあり、似て全く非なるモノだと思います。
そもそも1千万円以上するノーチラスと比べるべきものでもなく、ユーザー層が被ることはほぼないでしょう。
良い意味で「モノの価値とはブランドや販売価格で決まるものではない」ということを改めて考えさせられます。

まとめ

結論として、私はとにかくこの時計を気に入っています。
腕に着けるとポリッシュ部分やインデックス、ベゼルが美しく輝き、テンションが上がるのです。この値段でここまで高級感が出せるのは素晴らしいと思います。
ダイバーズウォッチというと、ロレックス、オメガ、チューダー、パネライ、ブランパン…と魅力的なモデルは挙げればキリがないですが、「10万円台でちょっと良いダイバーズウォッチ」が欲しいというニーズに対しては、間違いなくその価格以上の価値が感じられるはずです。