以前にiPad Pro対応のクラッチバッグを本革で自作したが、コシのある厚めのレザーを使った為、少し重いのがネックだった。
そこで今回は本体の保護性能ではなく、「手軽に使えるシンプルな本革スリーブケース(縦型)」をテーマとして自作を試みた。
使用するレザーはエルバマット
いつもお世話になっているNatt Leatherさんで購入したイタリア・テンペスティ社のエルバマットを使用する。
Natt Leatherさんの何が良いか、ざっくり説明すると以下の通り。個人レザークラフターには欠かせないショップだ。
①他ではあまり売られていないレザーを扱っている。
②高級なブライドルレザーをはじめ、バケッタ、トスカーノというイタリアンレザーを安価で販売している
③レザークラフト用のカット革という小口単位で販売している。
今回使うエルバマットは個人的にかなり気に入っているレザーで、植物タンニン鞣し&染料仕上げで、かつオイルを多く含んでいるので、エイジングが楽しめる高品質レザーとなっている。
作品イメージをスケッチ
革をいきなりカットする前にスケッチでイメージを具体化した方が失敗が少ないので、簡単にスケッチしてみた。
今回、マチのないシンプルなスリーブケースであることと縫い代も考え、iPad Proに対するカットレザー幅は両側合わせて+3.0cm、高さは上下合わせて+2.0cm程度となるようにした。※幅はApple Pencilも考慮している。
当初Apple Pencilの収納部を作ることも考えたが、iPad収納時にケースの裏表を考えないといけなくなることと、余計なものを付けると使いにくくなるデメリットも考え、究極的にシンプルにすることにした。
なので、iPad Proにペンシルをつけたまま、そのままスポッと入れられる手軽で軽量なケース、という当初の構想通りとなった。
縦型としたのはバックパックに入れた時にスリーブケースから取り出しやすくする為。
これが横型だとバックパックから一旦ケースごと取り出す必要があるので、バックパック使用前提で縦型とした。
早速レザークラフトに着手!
①レザーをカットする
レザーをカットする際は金属製定規を当てながら、ロータリーカッターでカットするのが1番精度が良いだろう。
但し、指を切る危険性があるので注意されたし。
コーナー部にR(カーブ)をつける場合は、硬貨を当ててアートカッターで切ると綺麗に切ることができる。
カッターは地面に垂直に立てる様にした方が良い。寝かせて切ると革のカット箇所が薄く仕上がってしまうことがある。
レザーをカットした後はステッチンググルーバーという溝掘り道具で、縫い目が綺麗に出るように溝を掘ることが多いが、今回のエルバマットは1.5mm厚でコシのない柔らかな革なので、溝を掘ると逆に汚くなってしまう可能性を考えて「跡付け」のみとした。
跡付けは専用工具ではなく、裁縫箱に入っているプラスチックのローラーで適当につけた。
②縫い針を通す穴を開ける
革は硬くそのままでは縫い針が通らない為、菱目打ちを使い事前に穴あけを行なっていく。集合住宅で音が気になる場合は、菱目パンチがオススメだ。しかし菱目パンチは構造上、革の端部にしか穴あけできないので注意。
縫い代として端部から5mmの間隔をとることにした。縫い代が大きい場合は最後にカットしてしまえば良いので、少し余裕を持って縫い目を開けておいた方が良い。
コーナー部分は4本の菱目パンチでは空けられないので、持っている2本菱目うちを使ったが、ここで失敗!
トンカチでカンカンと菱目打ちするのが面倒くさく、手でぐいっと押すように穴あけしたところ、ほぼ貫通してしまった。
こういうところで、いかに作業を丁寧に行うかが求められる。
反省を生かし、もう一方のコーナーはハンマーと菱目打ちを使って綺麗に開けることができた。
③ビニモを使って縫う
縫い糸はライターで炙って融着することができる「ビニモ」がオススメ。
発色も綺麗なので、革と色のコントラストを出すのも楽しい。
縫い終わった後はライターで炙る。ちょっと糸を長く残しすぎたせいで融着跡が大きくなってしまった。
縫い終わった後がこちら。
④コバをトコノールで仕上げる
レザークラフト作品の仕上げとして欠かせないのがコバ磨き。コバ磨きをすることで端部の剛性を高めて耐久力を上げることができる。
今回は革の厚みが薄いのでヘリ落としは使わず、ヤスリで軽く削った上で、トコノールを塗り、木製のコバ磨きを使用した。
⑤サフィールクリームで保湿・ツヤ出し
最後に革の保湿も兼ねてサフィールRenovatourクリームでケア。艶が出て良い感じに仕上がった。
実際の使用感は?
サイズ感はぴったりでストレスなくiPad Pro&Apple Pencilを収納・取り出しすることができた。
本体の保護性能は期待できないが、表面の傷防止はこれで十分。バッグ内で様々なモノと干渉し、アンチグレアフィルムが傷ついてしまっているので、最低限の保護は達成できそうだ。
非常に薄く・軽量に仕上がったので持ち運びに便利。マチがないので使わなくなったらマウスパッドとして使用できそう。
レザークラフトを趣味でやらないなら、買った方が安いかも
好きな材料・デザインで世界に一つのモノを作れるのがレザークラフトの醍醐味だが、こだわればこだわるほど、道具が必要になる。
今回使用した道具は少ないが、金具を使うケースでは穴あけ・カシメ・ハトメのような道具を用意する必要がある。
また、レザーをネットショップで購入する場合は、風合いやコシ・ハリ、厚み等の選定が難しい。浅草橋等の皮革卸ショップで買うのもありだが、良いレザーになると半裁くらいの大判で売っていることが多いので、ある程度レザーに詳しくないと失敗する可能性がある。
既製品では満足できないほどの強いコダワリが無ければ、既製品を買うのが無難かもしれない。