20年10月にテレワーク用として大人気のイトーキのサリダチェアYL9を購入。今回は購入当初は気づいていなかった負の部分にも焦点を当て、敢えて批判的な側面をレビューしていきたい。
では早速いきましょう!
イトーキサリダYL9のここがダメ!
①溜まった埃が掃除しにくい構造
人間の体重を支える剛性・安定性が求められるオフィスチェア。高いチェアほど頑丈なフレーム設計で、複雑な構造部分に埃が溜まりやすくなりがちだ。
チェアのフレーム部等に埃が溜まるのは仕方ない。静電モップで定期的に除去すれば良い話なのだが、サリダYL9の座面の後ろには縦にリブが入ったデザインになっており、非常に掃除がしにくい。
リブは部材の剛性を維持しつつ、軽量化をするためによく用いられる設計方法なので、意図があってのことだろうが、表面に出ないようにするなどの工夫が欲しかった。
また、樹脂フレームなので表面に静電気を帯びやすく、黒色であることも相まって、より埃が目立つ。
この点は実際に使用していて頻繁に目に入る部分ではないので、気にならない人には無視できるポイントかもしれない。
②固く・自由度の低いアームレスト(肘置き)
この点はネットの口コミでも多くの人がコメントしている点であるが、主に2つの課題がある。
一つは通常の組み付けだとアームレストの位置が体から遠すぎる点。以下写真内で赤点線で示しているのが通常の組み付け位置だ。
通常、アームレストはデスク天面の高さと揃えてフラットな状態にし、腕に局所的な負荷が掛からないようにしたいところであるが、YL9のアームレストは高さ調整しかできず、水平方向への調整は一切できないので、結果としてアームレストがかなり前の位置でデスクにぶつかってしまい、デスクに近づきたくても近づけない状態に陥ることになる。
奥行きが小さいデスクを使っているのであればまだしも、普通のデスク奥行き60㎝以上だと、ディスプレイまでの目線距離が遠くなり過ぎ、べストな姿勢を作るのは極めて難しい。
これに関して、上記写真の通り左右のアームレストを逆に取り付けることである程度は解消することができた。
しかしながら、細かいアームレスト位置調整は出来ないので、チェアではなく自分を合わせるという覚悟が必要となる。
二点目は、アームレストのクッション性が乏しい点だ。私はアームレスト上で肘に体重を乗せるように寄りかかることが結構多く、YL9ではすぐに肘が痛くなってしまった。
これについては購入レビューの中で申し上げた通り、Amazonで購入したEnich Argentというメーカーのクッションを取り付けていたが、そのクッションの厚み(3−4cm)分は高くなるので、よりベストなアームレスト高さに調整するのが難しくなった。
最近発売された「YL9G」というYL9ベースのゲーミングチェアモデルでは、アームレストの左右回転と前後移動に対応したほか、写真を見る限りではクッションが分厚くなっているので改善されていると思われるが、他のYL8、9といった既存モデルにも横展開して欲しいものだ。
サリダYL9に対応する純正以外のアームレストは私が探した限りでは無かったので、YL9Gのアームレストを別売りしてくれれば、かなりのYL8、9愛用者が喜ぶのではないだろうか。
③フィット感を損ねる固い背面素材
背面素材はエラストマーとなっている。メッシュ素材を採用したYL8よりも耐久性が高いだろうと思いYL9をチョイスしたが、耐久性は間違いなく高いと思われる一方で、想像していたよりも硬いので、ちょっとしなる程度の硬めのプラスチック素材と考えておく方が良い。素材自体が体の形に追従するような柔らかい素材では決して無い。
以前にユニクロのエアリズムを着て背面を倒し、リラックススタイルでiPadで動画視聴していたところ、気がつくと背中にボンレスハムのような跡がくっきりと付いていた。それ以来は薄着の時も厚めの綿素材のTシャツを着るようにしている。
また私の背丈(176㎝、73㎏)だと、仕事中に疲れた時に背伸びをしたり、両腕を頭の後ろで組むと、肩甲骨が背面素材の固定部にあたり、痛く感じる。
昨年購入時の秋口はエラストマー素材が冷たいと感じた為、IKEAのルッデという一枚革のムートンを背中に敷いていた。その為、購入当初は気が付かなかったが、夏場にルッデを外し、薄着でそのまま座るとエラストマーの凸凹がダイレクトに伝わってきて心地よさはないことに気が付いた。
更に言えばヘッドレストも同じ素材なのでリラックス感がない。
ヘッドレストの位置は前後調整できないので、背を倒して意図的に頭を後方に預けるようにしないとそもそもの出番がないが、折角息抜きに使用しても固すぎていまいち首の収まりが悪い。
④ランバーサポート(腰のサポート)が皆無
私が1番不満を感じている点は、腰をサポートしてくれるランバーサポート機能が無い点だ。ちなみにYL8にはランバーサポートが付いているが背面に腰をサポートするカーブがないので、同じくサポート力は弱いと考えられる。
YL9は腰あたりから格子が放射状に広がっていて、腰部はメッシュが細かい(硬め)、背面上部はメッシュが大きい(柔軟)という設計でランバーサポートがなくても腰をサポートしてくれるとのことだが、サポートされている感覚は皆無だ。
以下の写真をご覧いただくとわかる通り、背面はフラットで腰をサポートするようなカーブはないので、この椅子に座っていると自然と猫背になる。
ロッキングは体重自動検知式となっており自分では調整できない。結構硬い(ロッキング強め)ので、肩まわりで背面を押すような感じになる。すると、今度は腰が曲がった体勢になるので、そのままの姿勢だと腰痛になりやすい。
ただ、見た目はハーマンミラーのセイルチェアのようで洒落たデザインではある。
ついでに言うと、座面と背面の隙間が若干空いており、ロッキングを1番後ろに倒し、深く腰掛けた時にこの隙間が微妙に気になる。ここも作りが甘いポイントだろう。
⑤所々感じてしまう素材・仕上げ加工のチープさ
このチェアは定価で約4万円。私は1500円オフ&楽天ポイント5000円分を消化し、3.3万円程で購入した。ポイントも身銭の一部だと考えると、ほとんど値下がりしていない状態で購入したに等しい。購入直後に楽天セールで3.1万円まで価格が下がり、歯痒い思いをしたことを今でも覚えている。Amazonやら楽天のセールでよく値下がりしている印象なので、もし購入を検討しているなら3万円程度に値下がった時を狙うべきだ。
高級チェアと呼ばれるカテゴリでは10万円以上するのは当たり前であるし、イトーキのチェアラインナップにおいてもサリダチェアはコストパフォーマンス重視の安価な位置付けのラインナップであることは間違いない。
しかし感じてしまうのは、やはり“値段並み“ということ。所々にコストダウンの形跡を感じることができる。
まず「バリ取りの甘さ」。特に気になったのはヘッドレストのバリ。滅多に手に触れる部分ではないが、この部分に強く皮膚を擦ったら切り傷が入ってもおかしくはないバリの鋭さがある。以下写真は代表的な部分だが、射出成形の金型の精度が低いのか、後加工でバリ取りを怠っているのか、コスト削っている感を感じさせる部分。
背面フレームの表面は樹脂部品で囲われているが、チェア自体がでかいのでよくデスクの端部にぶつける。この時に付いた「擦り傷」は拭いても落ちないので、徐々に目立つ傷となって残っている。
樹脂部品は安価なポリプロピレン(安いグレードの車の内装材によく使われる樹脂)なので、そもそも高級感はない。
そして座面は毛玉が目立ってきた。これは座面の素材に加えて、洋服の繊維側からも削り取られてできた毛玉ではないかと推測している。座面は鱗状のテクスチャーで滑りにくい反面、柔らかい素材の洋服の繊維が引っかかりやすいと考えられる。
少しではあるが座面の毛羽立ちも出てきつつあるので、耐久性については疑問符がつく。できれば座面のカバーを取り外して洗えたり、交換できるようになると良いのではないだろうか。
ここまで下げポイントばかり書いているが、改めて見ると足周りはスッキリしていて、デザイン性は悪くないんだよな、とは思う。
サリダチェア最大のライバルとなるか!?オフィスコム「YS-1」
私が会社の同僚から相談を受け、3万円以下の予算内でオススメしたのは大手オフィス家具販売店オフィスコムオリジナルの「YSー1」というオフィスチェア。これが中々評判が良好だった。
同僚は一人暮らしで部屋に圧迫感が出ないようヘッドレスト無しにしたのだが、渋めのグリーンカラーが部屋の雰囲気にマッチしていて、腰痛もかなり楽になったと好評だった。
サリダYL9との比較表を作って見たので以下に示す。特に優位な点は、ロッキング強弱調整、アームレスト前後左右調整がある点だろうか。価格もフル装備で2.4万円とかなり破格だ。
スペック | イトーキサリダYL9 | オフィスコムYS-1 |
ロッキング固定段階 | 4段階固定 最大約130° | 3段階固定 最大130° |
ロッキング強さ調整 | × | 〇 |
座面高さ調整 | 〇 | 〇 |
座面スライド調整 | 〇 | 〇 |
アームレスト調整 | 高さのみ | 高さ・前後・左右回転 |
ヘッドレスト調整 | 高さ・角度 | 高さ・角度 |
ランバーサポート | × | 〇 |
重量 | 21.5kg | 18.6kg |
定価 | 39,900円 | 23,980円 |
私が家具店で試座した中で、腰のサポート力をしっかり感じることができたチェアは、どれも背面が「くの字」になっている。オフィスコムのYSー1も、腰部を押し出すように背面がくの字になっている。
また背面のフレームがオカムラのチェアにあるような控えめなデザインで、部屋の雰囲気に違和感なく馴染むデザインも◎。
テレワーク用として人気のサリダシリーズの対抗馬となるスペック・価格だと感じた。
Steelcase(スチールケース)も本気モード
本格派デスクチェアの一角であり米国老舗メーカーの「Steelcase」。そんなSteelcaseもリモートワーカーに照準を合わせた本気モデルを投入したきたようだ。その名も「Steelcase Series1」。
100年以上も働く人々の姿勢を研究したきたトップブランドの名は伊達ではない。代表作リープチェアに似た無駄を削ぎ落としたシンプルなルックスの本モデルは、アームレストもあらゆる方向への調整に対応し、ランバーサポートも付属している。
価格は約6万円とサリダよりも値は張るが、あのSteelcaseを6万円で手に入れられるのなら安いものだ。
フルスペックの高級チェア「エルゴヒューマン」
実は昨年サリダYL9を買う前に、本当に欲しかったのは「エルゴヒューマンプロオットマン」。当時、10万円という価格は手が出せず、やむなくコスパ重視で選んだのがサリダYL9だった。
結果的にサリダYL9から約1年で買い替えることになった。これも結果論ではあるが、やはり妥協せずに本命を買うのが後悔しない買い物だったかもしれない。
ちなみにオットマン付きのモデルにしたもののオットマンの活躍の機会は少ない。
エルゴヒューマンに類似の新星「COFO Chair」
私が以前にクラウドファンディングのMakuakeで募集されていた注目のブランドが「COFO Chair」。特徴は一瞬エルゴヒューマンと見間違える程の類似性、そして本家よりも圧倒的な安さ。
台湾製の高品質・多機能チェアのCOFO Chairはエルゴヒューマンキラーとなるか!?…
Makuakeでの応援総額「2億円」を突破、支援者3,333名という結果を叩き出した大人気キャンペーンで、数万円のチェアかつ日本国内のクラファンと考えると圧倒的な成果を得た製品。
ちなみにエルゴヒューマンと同じく台湾製となっており、アジアの中でも日本を除けば工業力・品質には申し分のない製造エリアと言える。
現在はAmazonや楽天でも購入が可能で、COFO Chair PROは記事投稿時点(リライト22/8/7)で39,999円という破格ながらフルスペックのオフィスチェアとなっている。
まとめ
私はテレワークになってからプライベート時間含めかなり多くの時間を自分のデスクで過ごしている。長時間座るからこそ、お金をかけるべき投資先だと遅れながら気づかせてくれた買い物となった。
サリダチェアYL9は使う人によっては十分満足がいくアイテムだ。しかし、私は今回挙げたデメリットの部分が気になってしまい、以前から本命視していたエルゴヒューマンプロに投資をすることに決めた。
エルゴヒューマンプロは10万以上するチェアなので、購入には勇気とお金が必要だ。
もし3~4万円の予算で選ぶとするなら、今の私なら「オフィスコムYS-1」か「COFO Chair」をお勧めしたい。
捨てるのも売るのも大変なチェア、ぜひ後悔のない買い物を!
※エルゴヒューマンとサリダの比較記事をアップしました。宜しければコチラもご覧下さい!