2023年秋に356フリーガーの25周年を記念してリリースされた「356.FLIEGER.KLASSIK.JUB」(JUBはjubilaumの略でドイツ語でアニバーサリーの意)。時計業界のクラシック回帰、小径化のトレンドの中でも存在感を放つ本作の魅力をレビューしていきたいと思います。
Sinnの魅力
Sinnの正式名称は「Sinn Spezialuhren(ジン特殊時計会社)」といい、その魅力は何と言っても”プロフェッショナルユースに耐え得る特殊技術を優れたデザインに落とし込みながらも、比較的手に届きやすい価格帯である”という文言に集約されるのではないでしょうか。
Sinnの優れたテクノロジーについて興味のある方は公式ウェブサイトをチェック頂くと、よくお分かりいただけると思います。
ドイツ製 腕時計Sinn(ジン)に使われている技術紹介です。水深5000mの高い防水性能や-45℃から+80℃の温度での…
ある意味ツールウォッチを極めた存在と言えるかもしれません。そんなマニアックな技術志向のブランドである点がSinnの魅力です。
356フリーガークロノ
フリーガーとはドイツ語でパイロットを意味する単語ですが、356.FLIEGERは103.B.AUTOと並び、ブランドを代表する人気クロノグラフウォッチです。
いずれも強化アクリルとサファイアクリスタルの2パターンの風防モデルを揃えており、強化アクリルモデルで103.Bが41㎜ケース径に15.9㎜厚、356が38.5㎜ケース径に15.5㎜厚となっています。
特に356はクロノグラフにしては小ぶりなケースサイズの為、一般的な日本人には腕なじみの良いサイズ感です。そのことが356の人気に繋がっていると感じます。
新作の356はバイコンパックスに
そして今年リリースされた356フリーガークラシックは40年代を彷彿とさせるクラシックなデザインとなりました。従来のトリコンパックスに対しバイコンパックス(2カウンター)となり、サブダイヤルも立体感のある年輪状のギヨシェが施されています。今回レビューするJUB(右)が世界限定500本、真ん中のホワイト文字盤、左のグラデーション文字盤のモデルは通常ラインナップとして加わりました。
限定モデルと通常モデルの主な違いについてまとめてみました。
限定品のみ異なる仕様となっている点があります。特にサテン仕上げのケースから放たれる鈍い輝きとアプライドロゴ、ロジウムメッキされた針にアンスラサイト色の文字盤と、全てが綺麗に調和しクラシカルな雰囲気と高級感を演出しています。
JUB(限定モデル) | 通常モデル | |
風防 | ドーム型サファイア | ドーム型強化アクリル |
ケース | サテン仕上げ | マット仕上げ |
ケースバック | シースルー | クローズド |
ブランドロゴ | アプライド(立体) | 印字 |
付属品 | スペシャルボックス レザーストラップ2本 | – |
針 | ロジウムメッキ | – |
通常モデルもパンダダイヤルに経年変化したようなグラデーション文字盤が映えます。どれも視認性が非常に高く、個性的です。
356.FLIEGER.KLASSIK.JUBを開封
スペシャルボックスからJUBがお目見え!
では早速某正規販売店で購入したJUBを開封していきます。
限定品のみスペシャルボックスに時計が納められ、ボアレザーストラップ2本と予備のバネ棒、工具が付属しています。これとは別に冊子も付いてきました。
写真内にあるステンレスベルトは556.Perlmuttのモデルのものですが、同じ38.5㎜径ケースなので互換性があります。後でステンレスベルトに付け替えて楽しもうという算段です。
文字盤のアンスラサイト(濃炭色)とボアレザーストラップの色合いが絶妙です。
ストラップはドイツ産のイノシシから作られている
付属するボアレザーストラップはドイツのイノシシ革を使用したヌバックレザーです。電子ノギスで計測したところ、革の厚みは3.6mmと非常に分厚く、見るからにタフそうです。
以下の写真の12時側のストラップを見てもらうと分かりますが、革由来のトラ・キズもあります。非常に味のあるレザーなので今後のエイジングが楽しみです。
雰囲気のあるドーム型サファイアクリスタル風防
サファイアクリスタルの塊から削り出して作られるドーム型風防はその名の通りエッジにRが付いているのでクラシカルな雰囲気を高めてくれます。表面には無反射コーティングが施されています。
ムーブメントはセリタ社SW510を搭載
セリタ社というと同じく汎用ムーブメントメーカーETA社の代替品を作るメーカーの印象が強いように思います。しかし、ベースデザインのバルジュー7750(その後ETA社が事業継承)は過去デイトナにも搭載されていたクロノグラフの名機で、更にSinnではムーブメントに装飾・青焼きネジを使用したプレミアムグレードを採用し、自社で精度のチューニングまで施しています。実際にSinn.556.Perlmuttに搭載されているETA2824-2というムーブメントも日差+1秒まで高められており、Sinnの品質へのコダワリが垣間見えます。
Sinnオリジナルローターには世界限定500本のシリアルナンバーも記載されます。
巻き上げ効率も良く、パワーリザーブも56時間と十分あり、メンテナンス性も高いムーブメントなので何一つ不満はないのです。
その他の特徴を纏めて紹介!
Sinnの時計は最低でも100m防水機能が付いているのですが、本モデルもねじ込み式プッシャーではないにも関わらず100m防水があります。針のロジウムメッキにより耐食性も高められています。
加えて、4,800A/mの帯磁耐性により電子機器から5cm以上距離を置けば磁気帯びすることはありません。
夜光の蓄光性も高く視認性はバッチリです。この視認性により、これがパイロットウォッチとしてのプロツールであることを思い出させます。
着用イメージ
腕回り17㎝の筆者が装着したイメージです。やはり38.5㎜ケース径は控え目で着け心地も上々。ネットで購入したSinn純正のバタフライバックルが届くまでは、付属のボアレザーストラップではなく5連ステンレスベルトを付けるつもりです。
厚み15㎜と聞くと分厚いと感じられるかもしれませんが、ケース径がコンパクトなので腕乗りもよく、厚みを感じさせないデザインです。
屋外でのリストショット
Sinn 356 Flieger Klassikには「武骨なのに上品」という言葉がしっくりきます。
まとめ~使えば使うほどハマるSinnの魅力~
デイトナやオメガスピードマスターに代表される3カウンタークロノもカッコイイですが、クラシカルな雰囲気の2カウンタークロノグラフも着実にファンを増やしているのではないかと思います。
最近ではTUDORのブラックベイクロノ、ブレゲのTYPE 20、カールF.ブヘラのヘリテージバイコンパックス、マニアックなところだとクロノトウキョウのHISUIなんかはドハマりしたデザインです。
Sinnに関して言えば、パッと目に入った時の華美な雰囲気は少ないのですが、それが逆に優れた点とも言えます。なぜなら控え目で上品である点こそ、この時計を”シーンを選ばずに使えるデイリーウォッチたらしめている特徴”だからです。
この時計はコレクションケースからたまに取り出して眺める類の時計ではありません。間違いなく、使う為に生まれてきた時計です。