IWCヨットクラブヴィンテージ

魅惑のヴィンテージウォッチ「IWC Yacht Club 811AD~1970年製~」購入レビュー

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今、ヴィンテージウォッチを選ぶ理由

筆者がヴィンテージウォッチを探すきっかけとなった出来事。それは通称「アニキ」と呼ばれる片野英児氏のYoutubeチャンネルで黒船時計古酒店の特集を見たことだった。ヴィンテージウォッチの魅力を視聴者に伝える上で、年を重ねたアニキの魅力とマッチし、良い動画だったと思う。

…そしてまんまとヴィンテージウォッチが気になり出した筆者はその深みに嵌ることになった。

魅力①〜時を経た分だけ増す魅力〜

ヴィンテージウォッチの魅力。それは現代の時計にはない“独特の雰囲気“だ。

例えば私が購入した「IWCヨットクラブ811AD」は、36mmの小ぶりなケースに、ぷっくりと丸みを帯びたプラスチック風防を備え、ダイヤルはポリッシュ、ケースはサテン(艶消し)という組み合わせだ。

この雰囲気と貫禄は新品の時計には出せない、と感じる。

細くて華奢な針や、一つひとつ金属球を埋め込んで作られるミニッツマーカーはとても優美で、流行りのラグスポウォッチにあるタフな印象とは対極にあるような存在だ。

この時計は1970年に作られたもので今年で52歳になる。私よりも10歳以上早く生まれているのに、素晴らしい精度で時を刻んでくれるし、魅力は色褪せるどころか増すばかりのように見える。

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魅力②〜自分だけのタイムピース〜

最新の時計を買って共に時間を過ごせば、いずれはヴィンテージとなり自分にとって欠かせないレガシーになるだろう。

一方でヴィンテージウォッチは既にその存在がレガシーであり、状態の良い個体が残っていたとすればそれ自体が希少なことだ。

故に人と被ることなどほとんど無いし、時計へのコダワリを感じさせる。

時計を何本か持っていたとしても、一本は持っておきたい。時計好きを引き寄せる魔力のようなものがヴィンテージウォッチにはある。

魅力③〜完成された機能を考えれば安価〜

1960年代はロレックス、オメガ、IWC等から数々の名作が生まれた機械式腕時計の隆盛期と言われている。

当時のモデルは腕時計の機能としては既に完成しており、耐久性・精度が高く、メンテナンスを怠らなければ今も現役で活躍する名機が多く存在する。

そんな名機の一つであるオールドインターのヨットクラブやOMEGAのシーマスターは、10〜20万円台で購入することができる

高級腕時計が高騰中の現在において、〜20万円台で買える名機が多く存在するヴィンテージウォッチは、注目すべきカテゴリではないだろうか。

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購入した場所・検討したモデル

ここでヴィンテージウォッチ購入にあたり検討したブランド/モデルと時計店を紹介したい。

ヴィンテージウォッチモデル3選

ヴィンテージウォッチといえばこれらのモデルは外せない。

①OMEGA シーマスター

ヴィンテージウォッチで最強のコスパを誇るOMEGA。ヴィンテージで唯一の懸念と言えば「防水性」が挙げられるが、スクリューバックの裏蓋を備え、汗程度は心配なく使えるスペック。

加えて、当時のOMEGAのキャリバー550系(カレンダーなし), 560系(カレンダー有)は完成度の高さと堅牢性に定評がある。

1950年代の終わりから1970年代まで多くのモデルが作られており、玉数も多く状態の良いものが10万円代という破格で手に入れることが出来る。

②Rolex デイトジャスト

防水性の極めて高いオイスターケース、華やかなフルーテッドベゼル等、当時から完成されたデザインで色褪せることのない名機「デイトジャスト」

ヴィンテージロレックスをさりげなく腕にはめていたら、そりゃ間違いなくカッコイイ。しかし高い!

昨今のロレックスバブルに便乗し、ヴィンテージも値上がり…。

10年前にジャックロードでヴィンテージロレックスを10〜20万円で叩き売りしていたのが懐かしい。あの頃に買っていれば…!

③IWC(オールドインター) ヨットクラブ

オールドインターとして親しまれるIWCのヴィンテージウォッチ。中でもヨットクラブは隠れた名品で、ヨット乗りの為に作られた防水ウォッチ。

キャリバー8541Bはペラトン式と呼ばれる極めて効率性の高い巻き上げ方式により名キャリバーとして名高く、ムーブメントにラバーのクッションを配置することで耐衝撃性も高められており、タフで信頼性の高いウォッチ。

IWCを選ぶ理由、それは「持っていると時計通っぽい」ということだ。レベルの低い選択基準だが、私のようなヒネくれ者は王道のロレックスではなくて敢えてIWCを選ぶことに悦を覚えるのだ。

そしてIWCは永久修理補償を謳っているブランド。ヴィンテージ品の場合は針や部品が新しい物に交換されてしまうことがあるので、基本はヴィンテージに詳しい時計修理屋に出すのが一般的だが、最終的な駆け込み寺があるのは安心材料か。

検討したヴィンテージウォッチ専門店

今回徘徊したヴィンテージウォッチを纏めて紹介したい。

ショップ名(HPリンク)概要
ケアーズメディアへの撮影協力も行うヴィンテージウォッチ専門店。江東区森下に自社時計修理工房を抱えており信頼度が高い。東京ミッドタウン、表参道ヒルズ等に店舗を構える。
モンテーヌサカエチカ名古屋•栄にある高級時計店系列のヴィンテージウォッチ専門店。提携修理店でOHを行った上で安価に提供してくれる良心的なショップ。
黒船時計古酒店ヴィンテージの時計・酒をテーマにした赤坂見附にあるショップ。購入後に希望する場合は無償でメンテナンスをしてくれる。美しくエイジングしたヴィンテージが多い印象。レザーストラップは全て自社オリジナルのクロコダイル(裏ラバー)のハイグレード品を使用。
FIRE KIDS横浜白楽のヴィンテージウォッチ専門店。バラエティに富んだ品揃えでヴィンテージウォッチ市場の勉強にもなるお店。

開封レビュー

結果的にモンテーヌ サカエチカで「IWCヨットクラブRef.811AD」を24万円で購入した。

通販で購入したが、丁寧に電話・メールで案内をしてもらい店員さんの対応に感謝。

そして届いた箱を見てテンションは最高潮へ。とっても素敵な化粧箱に入って送られてきた。

興奮しながら箱を開けると、ショップ名入りの専用ウォッチケース。

そして遂に時計と対面した時は思わず感嘆の吐息が出てしまったのを覚えている。商品ページで見た写真よりも100倍素敵な時計で手に取った時は本当に感動してしまった。

「これがヴィンテージウォッチの魅力か」

いろいろな角度で写真を撮っても、実物の魅力を100%伝えられている気がしないが、とにかく素晴らしい。ドーム型のプラスチック風防、ケース本体のポリッシュとサテンのコンビネーション、リューズの魚マーク、パールドロップ型のミニッツマーカー、サンレイ仕上げのシルバー文字盤、そして艶ありのリアルクロコのレザーストラップ(社外品)は全て調和が取れている。

使って感じた「IWCヨットクラブRef.811ADの魅力

キャリバー8541Bの実力

前述の通りペラトン氏が開発したペラトン式自動巻き機構は巻き上げ効率が非常に高いと言われている。

実際に自動巻きキャリバーETA2824−2を搭載したSinn.556と比較をしたところ、ヨットクラブRef.811ADの方が早く巻き上がる印象がある。

パワーリザーブも40−45時間あるので今の自動巻き時計と比較しても遜色ない性能を誇る。

リューズ操作も程よい重みを感じ、針がブレたりせずにキビキビ動くのが心地よい。

ジェラルド・ジェンタ氏によるデザイン

時計デザイナーとして泣く子も黙るジェラルド・ジェンタ氏。雲上ブランドであるオーデマピゲのロイヤルオーク、パテックフィリップのノーチラスのデザインを生み出した名デザイナーだ。

1962年のオメガ コンステレーションのCラインケースに通じる丸みを帯びたケースデザインがレトロな雰囲気を醸し出す。

ケースの角がしっかり残っているのが、あまりポリッシュされていない個体を見分けるポイント。

サテン仕上げの部分もツヤありに研磨されてしまっている個体は、オリジナルの雰囲気が損なわれてしまっているので注意したい。

着けやすいサイズ感

ケース径34mmが主流だった時代において、36mmのRef.811ADのサイズはタイムレスで、非常に良いサイズ感だ。

多くの細腕の日本人にとって、やはり36mmが最もスタンダードに使えるサイズだと感じる。

私の手首サイズは16.5cmで、腕につけると少し小さく感じるが、写真を通して見るとむしろこれがベストなサイズ感だと感じる。

このモデルの他、OMEGAシーマスターは35mm径が多いのでヴィンテージモデルの中では使いやすいサイズだ。

日常使いしやすい防水性

ヴィンテージウォッチは基本的に非防水として売られている為、過度な期待は厳禁である。しかし元々はヨットマン向けに作られた時計であり、裏蓋はスクリューバックで、リューズも元々は防水機構が備わっているはずなので、しっかりメンテナンスされた個体であれば多少の汗くらいは気にせず使えるだろう。

ただやはり高温多湿な夏や、雨の日は使わない方が無難だろう。

夏に使用したい場合は、汗が直接ケースに触れないようにNATOベルトに付け替えるのはありかもしれない。

おすすめの時計ベルト

このIWCヨットクラブが手に届くまで、どんなベルトに付け替えて遊ぼうか考えていた。

当時のヨットクラブはレザーバンドやステンレスバンド等の様々なタイプが販売されたようで、特に純正品であるゲイフレアー社製のライスバンドが付属する個体は希少で“めっけもん”かもしれない。

しかしベルトだけ探そうものなら10万円くらいしてしまうので、結果的に社外品のベルトの中からヴィンテージウォッチにマッチするものを2点程探し当てた。これについてはまたベルトを購入した際にレビューしていきたい。

① アキュレイトフォルムのカーキグリーンの豚革バンド(左)
② フォースナーのバンブーブレス“Klip”(右)

※写真は合成イメージ

深みにハマるヴィンテージの世界

今回足を踏み入れてみたヴィンテージウォッチの世界。

その世界は思った以上に深く、思った以上に魅力的だった。

50年以上に渡る時を超えて、今自分の腕にやってきたことを考えると、とても感慨深い。

新品の高級時計を買った時よりも重みがあるように感じる。きっとその歴史がそうさせているのだろう。

値段以上の経験と感動をもらったように思う。そしてこれは始まりに過ぎないのだ。

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